乾板写真の開発と普及
1871年、イギリス人医師リチャード・リーチ・マドックス(1816~1902)は、臭化銀をゼラチンに混ぜた感光乳剤を、ガラス板に塗布して乾燥させたゼラチン乾板を開発した。乾板は携帯性や保存性に優れ、工場での大量生産も可能となり、箱入りで販売されるようになる。乾板を持ち運んであらゆる場所での写真撮影が可能となり、この新技術によって湿板写真はあっという間に駆逐され、代わって乾板は世界中に広まった。
フィルムの登場
ジョージ・イーストマン(1854~1932)が創業した乾板メーカーのコダックは、1885年感光剤を紙に塗布したロールフィルムを開発。1888年には100枚撮影可能なフィルム装填済みのカメラを発売。撮影後にコダックに送り返すと、10ドルでプリントと新しいフィルム装填済みのカメラが送られてくるシステムを考案し、一般大衆への写真の普及に大いに貢献した。1889年にはセルロースを使った透明写真フィルムを開発し、コダックはその後の写真フィルムおよび映画フィルムの礎を築いてゆく。
21世紀の状況
ガラス乾板は壊れやすく、持ち運びには重く嵩張るという欠点があり、1940年前後にはほぼ姿を消したが、フィルムやデジタルに比べ平面性と解像度は乾板のほうが優れていることから、天体などの特殊分野では21世紀になった現在でもなお使用され続けている。
1990年代から急速に発展したデジタル写真は、それまでの化学処理を行なう銀塩写真とまったく異なり、撮影画像を電気信号として数値化したもので、その利便性は銀塩フィルムとは比較にならず、コンピュータ時代を象徴する記録媒体といえる。
21世紀初頭あたりまでのデジタル写真は、人工的な画質や色彩が目立ち、迅速さが優先されるニュースやスポーツなどの報道写真以外には使用に堪えられないものと評価されていたが、ここ数年の高性能化は目を見張るばかりである。リバーサルフィルムに遜色のない発色や高感度撮影における高画質の実現といった大変な進歩を遂げ、現在では完全に写真の世界を席巻したといえる。
いっぽう銀塩フィルムはデジタル写真の普及とともにそのシェアは縮小し続けているが、デジタルデータの保存や寿命に不確定要素が多いこともあり、フィルムを使い続ける写真家も数多くいるのが現状である。乾板やフィルムといった前時代の遺物のような技術が、湿板写真が消えていったようにはなくなっていかないのは興味深いことである。今後、写真の世界は技術開発とともに絶え間なく変わり、21世紀の写真の在り方はますます予断の許さないものとなっていくだろう。
- 河辺雄二、FLEACT横須賀広報課
Date Taken: | 12.24.2013 |
Date Posted: | 02.18.2024 01:23 |
Story ID: | 464166 |
Location: | YOKOSUKA, KANAGAWA, JP |
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